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医者の話 糾弾 コラムのページ

ジェットストリーム 詩:堀内茂男 ナレーション:城達也 5

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ジェットストリーム 城達也写真集 ナレーション 1 ナレーション 2 ナレーション 3 ナレーション 4 ナレーション 5

春を待つ街角〈大都会〉 ダウンロード
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マンハッタンのビルの林が、冬をむき出しにして
枯れ果てた街路樹は、灰色の町並みに消えている。
マンホールから立ち昇る蒸気が
こごえた町の、はく息のように白く
少し無口になった町を
レモン色も鮮やかに駆け抜けるタクシーが
実は、充分に元気だと云っている。
警笛を呼び交わす声に代え
ウィンドシールドのワイパーの跡を、思いつめた顔に似せて
車は戻りのない道を駆けていく。
「春まで、あと何マイル」そんな標識があればいい。
じっと耐えている人も、及び腰の人も
待ちきれず、荷作りを始めた人も
どんなに励まされるか知れないから…。
夏のぬけがら〈麦藁帽子〉 ダウンロード
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かつて、夏の日ざしが
丈高い木々の葉先に揺れ
森の下草の上にまで降りそそいで
青い実を、気づけば秋の色に染めあげていったのだ。
幼い夢の頭上に載っていた麦藁帽子の、丸い形の中で
一季節もまた成熟した。
時に、本の下道の木の実を拾う子供達も去って
別れに当たって、思い出されることのなかった麦藁帽子は
今、森の奥の、釘づけにされた別荘の部屋に
夏のぬけ殼のように置かれ
秋風の音を聞いているだろう。
その丸みの中に一杯の記憶を
来年まで暖め続けることができるみたいに…。
追憶のベンチ〈椅子〉 ダウンロード
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エディンバラのプリンセス大通りには
本のベンチが並んでいて
背もたれに打ちつけたプレートに
贈り主の名前と、ここにベンチを置く趣旨とが刻まれている。
「妻メアリーとの、楽しかった日々の記念に、ボブ。」
かつて、この同じ夏を生き
大通り公園の窪地を、縁に染まって歩いたメアリー夫人が
今、椅子の形に休んで、同じ夏を迎えている。
思い出のメアリーは、もう年をとることもなく
娘時代の笑顔のまま、生き続けることになった。
何という発明だろう。
通りすがりの旅人も、その椅子でメアリーに会い
ボブが云う
「楽しかった日々」のお裾分けに、あずかることが出来るというのだ。
ゴンドリエのロマンス〈ゴンドラ〉 ダウンロード
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ゴンドラの船べりを叩く水の音が
心なしか空に聞こえる。
建物の陰の船溜まりで、客待ちをしている船頭さん達に
ベニスの秋が忍び寄っている。
ストローハットのリボンに差した一輪の花が
さっき別れを告げて去って行ったご婦人からの贈り物だと云うが
若い船頭さんにとって
夏は、あまりにも早く過ぎ去ったことだろう。
幾度かリド島まで送って
一緒に水浴びもした仲だったと云うが
年かさの船頭さん達は
よくある話だと、笑って聞き流している。
リド島の渚に並ぶカプセルハウスが
海水浴客もいなくなって見捨てられる頃になれば
思い出の扉にも鍵が下りて
おし黙った秋を迎えることになるのを
誰もが、よく知っているのだった。
エディンバラの旅人 ダウンロード
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夏の夜がいつまでも明るいので
エディンバラの旅人は悠長なものだ。
七時になって
窓口を閉めたくてうずうずしている案内所の娘さんをつかまえて、
トロッサ地方の森と湖の旅についてくどくどと質問しているおじさんがいる。
十時になっても
公園のベンチや散歩道から男女が立ち去らないので
「門を閉めますよ」と、職員が告げてまわらなければならない。
谷に作られた公園の窪みの底のほうに
ようやく夕闇が訪れるが、見上げる丘のエディンバラ城は
青ざめた空に、茶色の石の肌をあらわにしている。
それが、橙色の脚光をあびて夜空に浮かび上がるまでに
旅人は、まだビールの二・三杯も、飲む時間があるというのだ。
赤い屋根 ダウンロード
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南ドイツの田園に
思い出としておかれ、記憶の回路でつながれた古い街々がある。
北からローテンブルク、ディンケルスビュール、ネルトリンゲンと下りながら
350年も昔の出来事に耳慣れてしまう、夏の旅のことだ。
風雪に鞣され、崩れかけた城壁は
幾世代もの時間を抱いて
ついには、朽ち果てる覚悟のように見えたが
その腕の中で、赤い三角屋根を折り重ねた町並みが
壁を思い思いのシヤーベット色に染めて
広場から路地へ、追憶の石畳を敷いているのだった。
屋台のさくらんぼが甘い季節には、家々の窓毎のゼラニウムが
晴れの日の風情で、旅人を迎える街であったが…。
白鳥の城 ダウンロード
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チロルの山々からババリアの野へ舞いおりてくる雪が
山裾の盆地を満たし
山腹の白鳥の城を見上げている頃だ。
山の頂ヘワイヤーをかけたロープウェイが
雪の断崖ヘゴンドラを引き上げているだろう。
夏には見捨てられていたロープウェイが、スキー客を集め
夏には恋人たちを集めた山間の小道が、雪に埋もれている。
そんな季節のことだ。
満月の夜には
馬橇を走らせてゆく、夢見ごこちの人がいて
カンテラの明かりが、鈴の音と共に揺れながら
遠ざかっていったものだという。
降る雪とともに語り伝えられて、誰知らぬ者もない。
白鳥の城の主人のことなのだが…。
夢幻飛行(エンディング) ダウンロード
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夜間飛行の、ジェット機の翼に点滅するランプは
遠ざかるにつれ、次第に星のまたたきと
区別がつかなくなります。
お聴きいただいております、この音楽が
美しく、あなたの夢にとけ込んで行きますように…。

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